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欧州ファンダメンタルズ入門|第19回 テーパリングについて[松崎美子]

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超金融緩和政策から平常運転へ移行

 2021年に入ってからマーケットでよく耳にする言葉の一つに「テーパリング」があります。テーパリングとは、「量的緩和策(以下、QE)の縮小」を意味しています。

 今回のコラムでは、為替に従事している私たちが、将来のどこかの時点で直面するであろうテーパリングについて、書いてみたいと思います。

 米国では、2008年11月から2013年12月までに、3回にわたりQEが実施されました。そして2014年1月よりテーパリングが始まったのです。

 チャート①は、QE1~3、そしてテーパリング時のドルの動きと米10年物国債利回り(長期金利)との関係を表したものです。QE1~3の間は、ドルは上昇・下落・横ばいと特に一貫性はありません。しかし、テーパリング終了直後から、一気にドル高へと転じています。

チャート① ドルと長期金利の推移ドルと長期金利の推移

出典:米セントルイス連銀

 長期金利もQE1~3の間は特に一貫性が見られませんが、テーパリング中から下落に転じ、その後も同じ動きとなっています。

欧州と英国でのテーパリング詐欺?

 米国とは違い、欧州と英国はまだテーパリングを経験したことがありませんが、「やるやる詐欺」ともいえる出来事がありました。

 2017年6月、ポルトガルで開催された欧州中央銀行(ECB)年次フォーラムで、その「事件」は起きました。初日にオープニングスピーチを行った当時のドラギ総裁は、「金融緩和の解除は急がない」と前置きしながらも、ユーロ圏経済が改善基調にある点や、「デフレからリフレへの変更」を明言したのです。

 これを受け、マーケット参加者はECBが予想よりずっと早く(テーパリングを含む)緩和策の解除に踏み切ると判断し、ユーロが大きく上昇、長期金利も同様に上昇(国債価格は下落)しました(チャート②)。

チャート② ユーロドル 日足

 ドラギショックの翌日、ECBフォーラムでは主要国の中銀総裁によるパネルディスカッションが行われましたが、そこに参加した当時の英中銀総裁カーニー氏の発言で、改めてびっくりさせられました。

 同氏は、「ここからの金融政策決定に関しては柔軟に対処したいと考えており、ずっと緩和策を通じて景気の刺激をしてきたが、場合によってはその一部を解除する必要性が生じてくることもあろう。その判断材料は三つあり、①企業投資などが活発化し、個人消費の鈍化をカバーできるか?②賃金や労働コストが改善されるか?③ブレグジット(EU離脱)交渉がスタートした現在、英国経済がどう反応するのか?—が挙げられる」と語り、前日のドラギ氏に続き、「早期の緩和策解除の可能性」を示唆しました(チャート③)。

チャート③ ポンドドル 日足

 しかし、カーニー氏の発言については、もう少し根が深い問題が生じました。というのも、このディスカッションのわずか1週間前に行ったスピーチでは、「英中銀の利上げは時期尚早」という内容の発言をしたばかりだったからです。

 カーニー氏は2013年の就任直後から、金融政策の方向性をコロコロ変える癖があり、「移り気であてにならないボーイフレンド」という異名を持っていました。そのため、パネルディスカッションでの予想外の発言を聞いた金融関係者からは、発言内容に一貫性がない点に非難が集中したことはいうまでもありません。

テーパリングと利上げが同時進行?

 いつかわれわれが直面するであろうテーパリングですが、テーパリングだけ単独で実施するか、それとも政策金利の引き上げと並行して行われるかは非常に重要です。もし並行して実施されると、2重の引き締めとなるからです。

 その場合、金利先高観は大きく上昇し、マーケットのボラティリティを高め金融市場の安定を損ねる結果にもなりかねません。中央銀行というところは、マーケットの過度なボラティリティを嫌い、常に市場安定の維持を優先しますので、実際に実施するにしても、注意に注意を重ねると私は思っています。

 われわれ市場参加者も、あまりにも先読みをして先走らないよう、慎重に対処すべきでしょう。

※この記事は、FX攻略.com2021年5月号(2021年3月19日発売)の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

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「ロンドンFX」松崎美子
ファンダメンタルズ・カレッジ – ファンダメンタルズ・カレッジ

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